趣旨文
江戸時代絵画を代表する絵師として知られる伊藤若冲(1716~1800)。精緻な描写、鮮やかな色彩や自由闊達な水墨表現は、対象を独自の視点で捉えた瑞々しい絵画世界を形成し、多くの人を魅了しています。
細見コレクションの若冲作品の特徴は、初期作と晩年作が見られるところにあります。彩色画の《雪中雄鶏図》や《糸瓜群虫図》は30代の作。絵画制作に専念する以前の作として注目される作品です。一方、80代の筆とされる《群鶏図》や《鼠婚礼図》などの水墨画は、墨や筆を自在に操り描く姿を想像させます。
本展では若冲を中心に、その弟子とされる若演や同時期に活躍した絵師のほか、江戸時代のさまざまな絵画を紹介します。多種多様な表現を通して、若冲の魅力と江戸絵画の奥深さに触れてください。
展覧会の見どころ
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見逃せない初期作
細見美術館には初期作とされる貴重な作品が所蔵されています。1 点は若冲の代名詞ともいえる 鶏を、もう 1 点は糸瓜に群がる虫たちを緻密に描いた作品です。後の代表作《動植綵絵》(皇居三の 丸尚蔵館蔵)※ につながる独特な表現の萌芽がみられます。
※《動植綵絵》は本展には出品されません伊藤若冲 《雪中雄鶏図》 江戸中期
作品解説:錦小路の青物問屋「桝屋」の主人だった 30代半ばの作で、字【あざな】の「景和」を署名としています。写実的で鮮やかな鶏の描写、奇妙な形の竹やとろけるような雪には早くも若冲独特の表現が表れています。
伊藤若冲 《糸瓜群虫図》 江戸中期
作品解説:極端に細長い糸瓜に群がる虫たち。よく見ると 11 匹の生き物が細部に至るまで丁寧に 描かれています。虫だけでなく、くるくると渦を巻く蔓の先端や傷んだ葉を持つ糸瓜の描写にも注 目してください。30 代後半の作。
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水墨に遊ぶ
若冲の画業において質・量ともに見逃せない水墨画は、細見コレクションでも大きな割合を占めています。コレクション第1号となった《瓢箪・牡丹図》のほか、晩年作とされる作品には愛らしい動物も。冴えわたる筆さばきと水墨表現の多様さには驚きです。
伊藤若冲 《瓢箪・牡丹図》 江戸中期
作品解説:右幅には白く長い瓢箪、左幅には濃い墨色の葉をもつ牡丹。線と面、モチーフの向きや構図など対比的な構成も巧妙です。濃淡や滲み、暈【ぼか】しのほか、筋目描き(すじめがき:画箋紙上で隣り合う墨の面の境にできる白い筋を活かす描き方)など、墨を自在に操っています。40代 の作。
伊藤若冲 《群鶏図》 寛政8年(1796)頃
作品解説:中央の雄鶏の逞しい姿が印象的な作品。力強い筆遣いで颯爽と描かれています。三羽そ れぞれを墨の濃淡を使い分けて描いた羽毛、鶏冠や脚の細かい表現など、手慣れた様子を示しな がらも丹念な描写に引き込まれます。
伊藤若冲 《鼠婚礼図》 寛政8年(1796)頃
作品解説:婚礼の準備に追われる鼠たち。右には宴に加わろうと盃を抱えた鼠が引っ張られていま す。大きく余白を取ることで、見る人の視線を誘導しながら物語性を強めています。晩年の作です が、童心にかえったような愛らしさです。
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若冲周辺の絵師
本展では、コレクションの中から若冲の弟子とされる若演の作品のほか、若冲と同じ時代に上方を中心に活躍した池大雅や中村芳中らの作品も展示します。絵師それぞれの筆の動きや色遣いなど、多彩な表現に触れてください。
若演 《釣瓶に鶏図》 江戸後期
作品解説:滑車を吊るす竿に止まる鶏。丸い胴体でバランスを取る真剣な表情もユーモラスです。 軽妙な筆遣いや簡略的な形態の表現は、若冲の晩年の水墨画風に拠りながらも個性的。 若演は若冲の弟子とされるうちの一人です。
池大雅 《児島湾真景図》 江戸中期
作品解説:友人と瀬戸内を周遊中に見た児島湾(岡山県)の景色を描いたもの。旅の記憶を理想化して描いています。高い視点から遠方を望む風景には旅の開放感が伝わってくるようです。文人画の大成者・大雅は幅広い交友関係を持ち、若冲とも親交がありました。
中村芳中 《初夏山水図》 江戸後期
作品解説:琳派の絵師として知られる芳中は、山水画も描いています。緩やかな描線に淡い色彩、 モチーフを大きくゆったりと捉える表現に芳中らしいおおらかさが漂います。 芳中には若冲との共通の知人もいたため、どこかで繋がっていたかもしれません。
主な出品作品
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酒井抱一 《白蓮図》 江戸後期 細見美術館蔵
(展示期間:1月7日 〜 2月2日)大名家の次男に生まれながら出家した抱一。終焉と再生を思わせる祈りの花としての蓮図には、雨華庵抱一の想いが読み取れます。
グッズ
※画像はイメージです。実際の商品とは異なる場合がございます。
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春画みくじクッキー 1,296円(税込)
完売いたしました縁起の良いものとして親しまれていた春画を、フォーチュンクッキーに仕立てました。
ココナッツ風味のクッキーを割るとあらわれる、春画があしらわれた変わったおみくじに思わずクスッとしてしまいます。
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イベント
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特別公開 日本の色 季節の彩り-吉岡幸雄の仕事-
概要
補足
開催日時:2019年6月25日(火)~7月7日(日)
(ただし、7月6日(土)は除く)午前11時~午後5時
会場:茶室 古香庵(細見美術館3階)※休館日のほか作品保護・貸切等によりご覧いただけない場合があります。
最新情報はtwitterにてご確認ください。
関連情報
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「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」開催記念上映
映画「春画と日本人」
「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」展の半券をご提示いただくと、通常一般 1,900円の ところ1,300円で鑑賞いただけます。
(C)大墻敦
2015年に開催された日本初となる大規模な春画展の開催までの道のりを追い、本物の「春画」を当たり前に観ることができる世の中を目指した人たちが体験した逆風と、知られざる苦労や努力を描きだしていく。
展覧会を成功に導いた人々とともに「春画と日本人」をめぐる謎に迫るドキュメンタリー。「春画と日本人」
上映期間:2024年10月4日(金)〜10月10日(木)
好評につき、再上映が決定いたしました!
2024年11月1日(金)~11月7日(木)
会場:京都シネマ(京都市下京区烏丸通四条下ルCOCON烏丸3階)- ※半券1枚につき、おひとり様割引となります。
- ※半券につきましては、使用前・使用後問いません。
- ※オンラインチケット・窓口購入どちらも適応となります。
きもの割
会期中、きもの姿でご来館いただくと200円引きでご観覧いただけます!
巡回情報
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・富山水墨美術館 (富山)
|2021年6月22日(火)~8月1日(日) 《終了》
サテライトイベント
展覧会開催にあわせて、よりタラブックスの世界を愉しむための特別イベントが開催されます。
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トークイベント
◼︎「タラブックスと本をつくること」
有料
事前申込制
開催日時:2019年6月28日(金)午後7時~午後9時
会場:梅田 蔦屋書店 4th Lounge
登壇者:
ギータ・ウォルフさん(タラブックス代表)
齋藤名穂さん(建築家 デザイナー)
KAILAS(写真家 松岡宏大さん、編集者 野瀬奈津子さん)
参加費:1,500円(税込)
お問合せ:梅田 蔦屋書店 4th Lounge※事前のお申込みの必要はございません。当日会場へ少し早目にお越しください。
※お席の都合上、立ち見になる場合。またはご入場頂けない可能性もございます。
悪しからずご了承くださいませ。
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京都国立近代美術館・細見美術館 相互優待のご案内
京都国立近代美術館の観覧券(当日分)をご提示頂けますと、優待料金にてご入館頂けます。
※ 事前にホームページ等で最新情報をご確認の上お出かけください。
また、細見美術館の入館シールまたは友の会メンバーズカードを京都国立近代美術館にてご提示頂ければ、京都国立近代美術館で開催中の展覧会を割引料金にてご観覧頂けます。
※ 展覧会によっては、優待が適用されない場合がございます。詳しくは各窓口までお問合せ下さい。 -
京都市京セラ美術館・細見美術館相互優待のご案内
京都市京セラ美術館の観覧券(当日分)をご提示頂けますと、優待料金にてご入館頂けます。
※ 事前にホームページ等で最新情報をご確認の上お出かけください。
また、細見美術館の入館シールまたは友の会メンバーズカードを京都市京セラ美術館にてご提示頂ければ、京都市京セラ美術館で開催中の展覧会を割引料金にてご観覧頂けます。
※ コレクションルームのみ対象となります。
※ 展覧会によっては、優待が適用されない場合がございます。詳しくは各窓口までお問合せ下さい。